バンコクでご家族での暮らしを始めるにあたり、最も重要な検討事項の一つが、お部屋の広さと間取りです。単身者向け物件とは異なり、家族全員が快適に過ごせる空間を見つけるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。今回は、バンコクの家族向け賃貸物件に焦点を当て、広さと間取り選びの具体的なヒントをご紹介します。

バンコクの間取り表示と広さのイメージ

日本では「2LDK」「3LDK」といった間取りの呼び方が一般的ですが、バンコクではシンプルに「2ベッドルーム(2BR)」や「3ベッドルーム(3BR)」と表現されます。これは寝室の数を指し、リビング(L)とダイニング(D)は通常含まれるものとして考えられます。

また、物件の広さを示す単位は日本と同じく**m²(平米)が使われますが、その算出方法には注意が必要です。バンコクでは、ベランダや玄関前の共用スペースなども含めた表示になっていることが多く、日本でイメージする居住スペースとは異なります。感覚としては、表示されている平米数の8割程度**が実際の居住空間と考えると良いでしょう。例えば、100m²と表示されていても、実際に生活するスペースは80m²程度と捉えるのが現実的です。

バスルームの数も部屋数に比例して多くなる傾向があり、2BRや3BRの物件では、各寝室に専用のバスルームが付いていることも珍しくありません。

家族向け物件のキッチンとリビングの配置

「2BR」や「3BR」と聞くと、リビングの他にダイニングやキッチンの造りが気になりますよね。

  • 3BR以上の物件: ほとんどの場合、リビングとダイニングが一続きになっており、キッチンは独立した空間として設けられています。日本風に例えるなら「3LD+K」のような間取りに近いでしょう。これは、タイの生活文化において、キッチンは調理に特化したスペースとして独立させ、リビングダイニングを家族が集まる開放的な空間として重視する傾向があるためです。
  • メイド部屋: 3BR以上の広めの物件には、メイド部屋が付いているケースも多く見られます。かつては住み込みのメイドを雇うのが一般的でしたが、最近では週に数回パートで家事手伝いを依頼するご家庭が増えているため、このメイド部屋を収納部屋として活用している方がほとんどです。
  • 玄関の造り: 日本のマンションでは、玄関から廊下があり、その先にリビングダイニングが広がる間取りが一般的ですが、バンコクでは玄関を入るとすぐにリビングルームが丸見えになるケースが非常に多いです。独立した玄関や長い廊下がある間取りはほとんど見られません。
  • 2BRの物件: 築年数の古い物件では、キッチンが独立した「独立型キッチン」が多い傾向にあります。一方、新しい物件やサービスアパートでは、「オープンキッチン」が主流です。小さなお子様がいらっしゃるご家庭では、お子様に目が届きやすいオープンキッチンタイプが人気ですが、中には玄関を入るといきなりキッチン、という独特な造りの物件も少なくありませんので、内見時には注意が必要です。
  • リビングダイニングの広さ: 2BR物件では、リビングダイニングスペースが比較的大きく取られている間取りが多い一方で、納戸や物置きといった収納スペースはほとんど付いていません。この点は、日本の物件との大きな違いと言えるでしょう。

実際の広さとベッドルームのサイズ感

広さについて、「日本では80平米でゆとりの3LDK」といった広告を目にすることがありますが、バンコクでは感覚が異なります。

  • 80平米の2BR: バンコクで80平米の2BRの場合、メインベッドルームは比較的ゆとりがあっても、セカンドベッドルームはシングルベッド1台で精一杯の広さであることがほとんどです。
  • ツインベッドルーム: セカンドベッドルームにシングルベッドを2台(ツイン)置ける広さになるのは、100平米以上の物件が目安となります。

実は、この「手頃な広さの2BR(特に80〜100平米前後)」というのは、バンコクでは非常に少ないのが現状です。多くの物件は、単身者向けのコンパクトな1BRか、家族向けの大型3BR以上に二極化している傾向があります。

新旧物件の価格傾向と賢い選択

最近のバンコクの賃貸市場では、興味深い価格傾向が見られます。

  • 広くて古い3BR(約250平米前後)と、狭くて新しい2BR(約80平米前後)がほぼ同じような家賃で提供されていることがあります。

これは、物件が建設された時代の背景が大きく関係しています。

古い物件(第一次建築ラッシュ時、約15年以上前):

  • 当時の土地の値段が安かったため、より広い敷地に建てることができました。
  • フルタイムや住み込みのメイドを雇うのが当たり前の時代だったため、広い部屋に独立キッチン、メイド部屋付きといった造りが主流でした。
  • 設備は最新ではないものの、広々とした空間が魅力です。

新しい物件(近年):

  • 土地の値段や建築コストが上昇しているため、限られたスペースを効率的に使う傾向があります。
  • そのため、狭くても家賃は高くなってしまう、という背景があります。

この選択は非常に悩ましいものですが、まずは代表的な新旧両方の物件を1〜2件ずつ見学してみることを強くお勧めします。実際に目で見て、それぞれの広さ、設備、雰囲気を感じ取ることが重要です。

そして、日本にいらっしゃる奥様に、それぞれの物件の写真を送り、ご家族のライフスタイル(お子様の年齢、荷物の量、来客の頻度、家事のスタイルなど)にどちらがよりマッチしているかをよく話し合って決めるのが賢明でしょう。